臨床研究について知っていただきたいこと

  1. 臨床研究について知っていただきたいこと

1.市中病院における研究の主な目的:

市中病院における研究の主要な目標は、医療現場の課題を早くかつ正確に共有し、解決策を提供することです。市中病院において、研究発表業績は専門医資格申請などに必要ですが、職位にはほとんど影響しません。臨床研究は医療のPDCAサイクル(Plan、Do、Check、Action)の中のCheck段階で、医療現場から得られた結果を迅速に共有し、医療の質を改善することを重要視しています。研究報告において、速さと正確さの両方が重要ですが、市中病院では速さの方に重きが置かれると考えています。

2.臨床研究者の現状と支援体制:

 臨床研究者は、組織が持つ情報の精製者です。臨床研究者は所属する組織の情報を最新の解析技術を用いて精製し、世界が理解しやすい形に整える役割を果たしています。臨床研究の技術と臨床技術は異なります。医療安全の領域では問題を明らかにする論文が出ても、問題の改善が難しいこともあります。また、臨床研究に秀でていることが、臨床家として優れていることを保証するものではありません。

 当支援室は、研究を支援しながらも、医療チームワークが最重要であると認識しています。それでも、研究を通じて情報を精製し、組織の価値を高めることも組織にとって有益だと考えており、研究者や情報を共有したい人々に適切なサポートを提供する体制を整備することを目指しています。

 臨床研究支援は、医療現場の問題解決に貢献し、医療資源の無駄を削減し、施設や地域の競争力を高め、働く人たちのモチベーションも高め、医療人材不足を一部でも補うことに寄与できると期待されています。また当支援室は、臨床研究が生む恩恵をできるだけ偏りなく貢献した人々へ届けられるような工夫を検討していきたいと考えています。

3.統計や疫学技術の利用について

 統計や疫学の技術は、研究結果の正確性を評価するための技術です。これらの技術は論文の価値向上だけでなく、データ分析の過程や結果の解釈の正確性を確保する役割も果たします。誤った解析結果が現場に影響を及ぼさないように、情報分析と結果解釈のレフェリー的な役割を担っているとも言えます。研究者の思考過程と研究プロセス全てが、統計解析と結果の解釈に影響を与えるため、データ収集前や研究開始前からデザインや解析について相談をお勧めしています。

 近年、統計ソフトや疫学技術は進化し、解析ルールも増加していますが、研究の結果や示唆は明確であるべきです。興味がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。