臨床工学科

臨床工学技士(ME:Medical Engineer)について

 臨床工学技士は、放射線技師、臨床検査技師と同じく、診療補助に従事するメディカルスタッフの一種であり、現在の医療に不可欠な多様化する医療機器のスペシャリストです。
院内にある日常的に使用する医療機器(シリンジポンプ、輸液ポンプ、パルスオキシメーターなど)の保守・点検などの安全確保はもちろんのこと、生命維持管理装置(人工呼吸器、人工透析装置、人工心肺装置、体外式膜型人工肺など)を医師の指示の元、操作を行いチーム医療へ貢献しています。

 さらに、現在、診療科への診療補助も拡大し、内視鏡室、脳神経外科手術、心臓カテーテル検査、植え込み型心臓デバイス、心臓電気生理的検査など活躍の場を広げ、より多くの診療に携わり、各専門性を発揮し、診療へ貢献しています。

当院の臨床工学科について

 沖縄県立病院の臨床工学科は2009年に正規職員として採用され、現在、当院、中部病院、北部病院、宮古病院、八重山病院と精和病院以外の5つの県立病院に配属されています。

 当院には、20名が在籍し、2交代勤務を実施、常時1名以上の臨床工学技士が在院する事で様々な医療機器の安全確保に努めています。また、当院はより重症・重篤患者へ救急医療を提供する三次救急医療機関として迅速な緊急対応ができる体制をとっており、当科も緊急度の高い業務に対応できる人材育成に努めています。
さらに小児救命救急センターとして小児に特化した集中治療室(PICU)は重症小児患者を積極的に受入れ、治療しています。県内では数少ない小児領域の臨床工学技士業務を行うことが可能です。

 最後に、当院は島尻地区の診療所(渡名喜、粟国、久高、渡嘉敷、阿嘉、座間味、北大東、南大東)を管轄し、年に一度、臨床工学技士が各診療所を訪問、それぞれの診療所の医療機器の安全管理、運用のサポートも行なっております。

手術室部門

 手術室では、小児、成人心臓血管外科手術における人工心肺業務、脳血管外科手術における各種モニタリングの操作、整形外科、産婦人科手術、末梢血管手術における自己血回収装置操作業務を行なっています。

 当院は県内で唯一の小児専門病院として小児心臓血管外科手術に携わることがでます。ほぼ全ての先天性心疾患に対する人工心肺技術、また、未熟児・低出生体重児の比率が比較的高いため、低体重時に対する人工心肺技術、小児の特殊な大動脈関連手術に対する人工心肺技術など、先天性心疾患特有の人工心肺技術を行なっております。

 さらに、成人心臓血管外科領域は、弁膜症や冠動脈疾患を含む心臓疾患はもちろんのこと、大動脈解離などの大血管疾患までほぼすべての人工心肺技術を行なっています。
また、低侵襲心臓手術(MICS: minimally invasive cardiac surgery)、脳合併症が懸念される出血傾向を有する症例でのnafamostat mesilate併用による人工心肺技術も行なっています。
ここのように、日齢1日の体重2000g以下の新生児から100Kgを超える成人まで様々な人工心肺技術を習得することができます。
 症例数に関しても、小児領域で96例(2020年度)、成人領域で140例(2020年度)と合わせて、年間250~300例程の人工心肺操作症例を行なっています。

 近年は、脳神経外科でのモニタリング業務(MEP、SEP、VEP、ABR)やナビゲーション業務にも携わっています。さらに、24時間臨床工学技士が在院しており、緊急手術に対しても迅速に対応しております。

心臓カテーテル室部門

 血管や心腔に挿入したカテーテルで圧力を測定、造影剤を用いて冠動脈や心腔を描出する検査です。
また、心筋梗塞に対する冠動脈インターベーションではステントと呼ばれる網目状の金属を血管内部に挿入し血液の流れを改善する治療で、臨床工学技士は血管内超音波検査機器、ローターブレーダーで使用する機器の設定や、ポリグラフの操作、記録など機器の操作を含む診療の補助を行います。

 当院はこども病院を標榜しているため、先天性心疾患の生後0日の新生児からカテーテルによる検査・治療を専門的に行っている数少ない施設です。また、心房中隔欠損症に対する開胸手術よりも低侵襲である閉鎖栓を用いた経カテーテルによる心房中隔欠損閉鎖術は沖縄県内では唯一当院で施行しており、臨床工学科も診療支援を行っています。

植え込み型心臓デバイス(CEID)

 心臓の脈が遅くなる病気には、洞不全症候群や房室ブロックなどがあり植え込み型ペースメーカはこの様な不整脈に対する治療法です。心室頻拍や心室細動といった致死的な頻脈性の不整脈には植え込み型除細動器(ICD)を使用します。

 植え込み手術での立ち合いから操作を担当し、退院後も定期的な外来診療によるフォローアップと、インターネット回線を介した遠隔管理を行うことで安全性を担保し、安心して生活が送れるように患者をサポートします。
また、小児病棟でもあるために乳幼児に対するペースメーカの設定とご家族に対してのサポートも積極的に行っています。

集中治療部門

 当院は成人領域でのICU(集中治療室)、小児領域でのPICU、新生児領域でのNICU、GCUを有しており、当科は、それぞれの専門性の高い治療の補助を行なっています。

 人工呼吸器業務は、集中治療室で使用される、人工呼吸器の管理だけでなく、病棟で可動している人工呼吸器も、毎日のラウンドで管理しています。
急性血液浄化領域では、成人でのCRRT、apheresis、出張HDはもちろん、新生児に対する血液浄化(CRRT、PMX-DHP)も行なっています。
 補助循環業務領域では、ECMO(体外式膜型人工肺)装置を成人、小児用と計7台と県内で最も多く保有し、緊急度の高い症例や、近年、感染症による合併症として行われるECMOに対しても対応しています。また、小児領域でのECMOに関しても経験しています。
重症症例も多く、集中治療科、看護師、その他のメディカルスタッフと共にチーム医療に努めています。

透析部門

 当院では19床の血液浄化センターを有し、透析液の水質管理やコンソールのメンテナンス業務、戦士から返血、止血までの一連の治療を看護師と協働で行っております。
重症度の高い患者さんのケースでは、病棟やICUへ出向いて出張透析を行い、夜間・休日も24時間体制で対応に当たっております。
その他、持続透析ろ過や血漿交換・免疫吸着・腹水ろ過濃縮再静注法などさまざまなアフェレーシス療法も行っております。
 【2020年度 出張透析 234件、CRRT 543件(小児含む)、アフェレーシス 93件】

 また、母子医療センターも併設しているため対応する患者さんも幅広く、出生0日の新生児から高齢者まで、各診療科の医師、看護師などと連携をとり、さまざまな症例、疾患の治療に携わっております。

内視鏡部門

 当科が担う内視鏡関連機器は、内視鏡システム(画像モニタ,システムプロセッサ,光源装置,CO2 送気装置など)を中心に、検査もしくは治療の症例に最適な仕様で選択的に接続される軟性内視鏡(ビデオスコープ)またはファイバースコープ、超音波画像診断装置、画像記録装置(ファイリングシステム)をはじめとした画像診断・記録機器に加え、内視鏡治療には不可欠な電気手術器(電気メス)、アルゴンプラズマ凝固装置(APC*)、使用後のビデオスコープの再生処理のために導入されている洗浄消毒装置など、内視鏡を取り巻く環境は機器が清潔でかつ正常に機能することを目的とし業務支援を行っています。

中央医療機器管理部門

 臨床工学科では院内で使用される人工呼吸器や輸液ポンプ・シリンジポンプといった医療機器を、専用の管理ソフトウェアで運用しています。
また、医療機器の定期的な点検の実施や、病棟などでの使用する医療機器トラブルの初期対応、パーツ交換、医療従事者への取り扱いなどの講習会も積極的に開催しており、安全性・機能性を含めた総合的な医療の質向上に取り組んでいます。