当院は、高度・多機能病院として救命救急医療、母子総合医療センター、臨床研修指定病院、離島支援等、高度特殊医療を担うことを基本方針として掲げています。この基本方針を遂行できるよう検査科体制を構築し、臨床医や研修医のニーズに応え、患者さんにとってより良い医療を提供できるよう日々、迅速な検査結果の報告や検査データの精度管理を行っています。
当科は生化学・血清・血液・一般検査、輸血検査、細菌検査、病理検査、生理機能検査、眼科検査の6部門の業務と、また成人外来採血業務も行っています。
日本臨床衛生検査技師会 品質保証施設認定(2024年-2026年)
認定輸血検査技師制度 指定施設認定(2019年-2024年)
日本臨床衛生検査技師会 臨床検査精度管理調査
日本医師会 臨床検査精度管理調査
沖縄県医師会 臨床検査精度管理調査
病理医 | 2人 |
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検査医 | 1人 |
超音波検査医 | 1人 |
検査技師長 | 1人 |
検査副技師長 | 2人(それぞれ病理検査、生理検査業務を兼任) |
輸血検査 | 4人(臨床検査技師3人、事務員1人) |
細菌検査 | 5人 |
病理検査 | 7人(臨床検査技師6人、事務員1人) |
生理機能検査 | 13人(臨床検査技師12人、事務員1) |
生化学・血清・一般・血液検査 | 14人(臨床検査技師12人、検査助手1人、事務員1人) |
眼科検査 | 3人(視能訓練士3人) |
採血業務 | 4人(採血専任看護師2人、事務・集荷担当2人) |
認定血液検査技師 | 4人 |
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認定輸血検査技師 | 1人 |
認定病理検査技師 | 1人 |
認定一般検査技師 | 1人 |
細胞検査士 | 4人 |
超音波検査士 | 7人 |
血管診療技師 | 1人 |
2級検査士(血液) | 1人 |
臨地実習指導員 | 5人 |
生化学・免疫検査とは、採取した血液や尿中に含まれる様々な成分を測定する検査です。最も取り扱う検査項目が多く、当院でも約70項目の検査が可能です。また、特殊な検査は県外の検査センターへ検査依頼をしています。検体を右写真の遠心機で前処理した後に、様々な項目を機械で測定します。
生化学検査とは、各種臓器に関連した項目を化学的に測定する検査です。検査方法は、主にコンピュータで管理された高性能の自動分析装置を使用し、正確かつ迅速に検査データを病棟及び外来診察室に報告しています。当院で測定している項目は以下の通りです。
<測定項目> | |
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1)電解質・金属 | ナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロール(Cl)、カルシウム(Ca) 無機リン(IP)、マグネシウム(Mg)、血清鉄(Fe) |
2)タンパク質 | 総蛋白(TP)、アルブミン(ALB)、プレアルブミン(PreALB)、 フェリチン(FER)、C反応性蛋白質(CRP) |
3)非蛋白性窒素 | 尿素窒素(UN)、クレアチニン(CRE)、尿酸(UA)、 アンモニア(NH3) |
4)脂質 | 総コレステロール(T-CHO)、HDL-コレステロール LDL-コレステロール、中性脂肪(TG) |
5)糖質関連物質 | 血糖(Glu)、糖化ヘモグロビン(HbA1C) |
6)各種酵素 | AST(GOT)、ALT(GTP)、LDH、ALP、γ-GT コリンエステラーゼ(ChE)、リパーゼ、アミラーゼ(AMY) P型アミラーゼ、CK、CK-MB |
7)生体色素 | 総ビリルビン(T-Bil)、直接ビリルビン(D-Bil)、 遊離ビリルビン(U-Bil) |
血液中での感染によってできた物質(抗体など)の有無や量を調べる検査で、院内では約15項目実施しています。
梅毒(TP)、HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体、HCV抗体、HIV、HTLV-Ⅰ,Ⅱ、プロカルシトニン(PCT)、IgG、IgA、IgM、C3、C4
がんの中には、“腫瘍マーカー”とよばれる物質を作り出すものがあります。がんの有無や進行度、治療効果など把握するのに役立つ検査です。
CA19-9、PSA、CEA、AFP、PIVKA-Ⅱ、CA15-3など
ホルモンを産生する臓器は、ホルモンが必要なときに必要なだけ分泌されるようになっています。しかし病気によっては、過剰に産生したり、分泌低下をきたします。ホルモンの分泌量を調べることによって、下垂体や甲状腺、副腎などの病変把握に寄与します。
TSH、FT3、FT4、インスリン、コルチゾール、PTH-インタクト、β-HCG、BNP
治療のために投与されている薬剤でも、薬剤によっては血中濃度が高いと副作用をおこすことがあります。そのような薬物の血中濃度を測定し、適切な濃度に収まっているかを調べる検査です。
カルバマゼピン、ジゴキシン、フェノバルビタール、バンコマイシン、バルプロ酸、テオフィリン、タクロリムス、シクロスポリンなど
A型 | O型 | B型 | AB型 |
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40% | 30% | 20% | 10% |
ABO式血液型の次に有名な血液型で、ABO式と同様に輸血をする上で重要な検査です。RhD陽性(Rh(+))とRhD陰性(Rh(-))に区別されます。
RhD陽性(+) | RhD陰性(−) |
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99.5% | 0.5% |
不規則抗体検査とは、妊産婦や輸血を行う予定のある方を対象として、妊娠や輸血時に影響を与える抗体が無いかを検査します。出産前や輸血前に予め調べておくことが重要になります。
日本赤十字血液センターより供給された血液製剤は、基準を満たした冷蔵・冷凍庫にて保管をしており、毎日、温度や状態をチェックしています。
患者さんに血液製剤を輸血しても副作用が起こらないか、予め確認する検査です。血液製剤と患者さんの血液を自動分析装置、または用手法(試験管内)で反応させて検査します。
検査が終わった血液製剤は、臨床検査技師と医師または看護師とでダブルチェックを行い、許可した製剤のみ病棟や外来に払い出しています。
血液検査室では、血算、血液像、血沈、血液凝固検査、血小板凝集能、骨髄像などの検査を行っています。
白血球はさらに5分類され、それぞれが体の殺菌や免疫反応に関係します。また、さまざまな疾患で増減や異常を起こします。白血病とは白血球が腫瘍化した病状です。その中でも沖縄や九州で多いATL(成人T細胞性白血病)はリンパ球に特徴があります。(右写真:flower cellと呼ばれ、花様の核をもつリンパ球)
赤血球の数が減ると貧血になり、増えすぎると多血症になります。基準値には男女差 があります。
血小板は出血をとめる働きがあり、この数が少ないと出血しやすく止血しにくくなり、増加しすぎると血栓ができやすくなります。
血算 | 血液中の細胞成分(白血球、赤血球、血小板)の測定 |
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血液像 | 白血球の5分類をパーセントで表しますが、機器で分類する方法と、 スライドグラスに血液を薄く伸ばして染色し、顕微鏡下で分類する方法があります。 |
赤沈 | 抗凝固剤を入れた血液を細長いガラス管にいれて垂直に立てておき、赤血球が何㎜沈んだかを測定します。リウマチや感染症などの炎症の指標になります。 |
凝固検査 | PT時間、APTT時間、フィブリノーゲン、AT-Ⅲ、FDP、Dダイマーを実施しています。PT時間はワーファリンなどの抗凝固治療薬のコントロールに利用します。 |
血小板凝集能 | 血小板の機能検査のひとつで、各種の先天性及び後天性血小板異常の診断、出血性疾患や血栓・塞栓症の病態把握や識別、それらの疾患の予防や治療に必要な検査です。 |
骨髄像 | 血液は骨髄で造られます。骨髄液を採取・標本作製して観察することで、血液疾患の病態を知ることができる重要な検査です。 |
一般検査では、尿検査、便検査、髄液検査、穿刺液(胸水、腹水、関節液)検査、精液検査などを行っています。
腎、尿路系、肝、内分泌系などの状態を知ることができます。検査項目によっては24時間尿、早朝第一尿など特別な採取法で得た検体で検査する場合もあります。
蛋白、pH、潜血、比重、ケトン体、ビリルビン、糖、ウロビリノーゲン、白血球、亜硝酸塩
尿沈渣中にみられる成分:赤血球、白血球、上皮細胞、細菌、円柱、結晶など
中間尿を採取してください。排尿の始めと終わりの尿を除いたものを中間尿といい、細菌や尿路外からの異物の混入を防ぐことができます。
糞便中のヘモグロビンを検出します。便潜血の検出は、大腸がんをはじめとした消化管の出血性病変の検査として利用されています。
糞便にホルマリン、エーテルを加え、虫卵・虫体を遠心沈殿させて、顕微鏡で観察します。糞線虫、ランブル鞭毛虫卵など。
ギョウ虫卵の検出に利用されます。
感染症を引きおこす微生物には、細菌、原虫、真菌、ウイルスなどがあります。細菌検査では、主に細菌、真菌の検査を行っています。検査対象となる材料は、主に喀痰、尿、血液、膿、便などです。これらの材料から感染症の原因を思われる細菌(起炎菌)を見つけ出し、どのような抗菌剤が有効かを検査します。
肺炎や尿路感染症、食中毒など感染症を引き起こす菌の存在の有無を検査し、どの抗菌薬が有効か調べます。検査結果が出るまでには、通常2~4日ほどかかります。また、血液の中に菌がいるかどうかも調べます。
各検体に適した培地で1~2日培養後、感染症の原因と考えられる細菌の菌種を同定します。また細菌の薬剤に対する感受性を調べ、どの抗菌剤が有効か調べています。
結核菌を含むマイコバクテリウム属菌を抗酸菌と総称し、検査しています。抗酸菌の発育は遅く(1~8週間)、毎週発育状況を確認しています。塗抹検査は蛍光染色とチール・ネルゼン染色を行い、24時間以内に結果を報告しています。
抗酸菌の同定試験・薬剤感受性試験、抗酸菌の遺伝子検査は外部委託しています。
細菌検査技師は、感染症内科医やICN(Infection Control Nurse:感染管理看護師),他のコメディカルスタッフとともにICT(Infection Control Team:感染制御チーム)活動を行っています。院内で発生した耐性菌のデータを他のICTメンバーと情報共有することで、他の患者さんに細菌が伝播するのを防ぐ感染管理としての役割を担っています。
また、週に1度行われる血培カンファレンスでは、感染症内科医、ICNとともに血液から細菌が検出された患者さんへの抗菌薬治療が適切であるかどうかを検討しています。
心臓は血液を全身に送るポンプとして休みなく働いています。心臓の働きによって起こる電気的変化を皮膚につけた電極から検出し波形として記録し、この波形から心臓機能異常(不整脈・狭心症・心筋梗塞)の診断に役立てます。
検査はベッドに仰向けになり、手足・胸に電極をつけて2、3分程度で終わります。
怖がったり、泣いて検査できない乳幼児には、検査が落ち着いてできるようにミルク・おしゃぶり等を使用させていただく場合がありますので準備して下さい。
電極を体につけ、運動してもらいます。運動によって心臓に負担をかけ、安静時ではわからない心電図の変化を調べます。
携帯タイプの機器を装着し持ち帰ってもらい、24時間の心電図を記録する検査で、入浴以外の日常生活の中で心電図上にどのような変化が起こるのかを調べます。
肺の大きさ(息を吸う量、吐く量)や酸素を取り込む能力を調べます。
呼吸機能検査によって肺や気管支の障害の有無や程度がわかります。また全身麻酔で行う手術の前には呼吸の状態を把握するために行うことがあります。
病理検査室は、常勤病理医2名と臨床検査技師6名(細胞検査士2名を含む)、事務員1名で業務を行っています。
手術で摘出した臓器や内視鏡下で採取された生検など提出された検体を元に、受付、切り出し、パラフィン包埋、ブロック作製、薄切、染色を臨床検査技師が行い、病理医により組織診断を行います。
手術中に摘出予定の腫瘤の一部を切り取り、標本化して良悪性の診断や、癌病巣部が取り切れているかの判断を標本化して診断を行います。凍結ブロック作製、薄切、染色までを臨床検査技師が実施し、検体提出から約15分以内で病理医が診断できるように、迅速に対応するようにしています。
婦人科領域、体腔液、喀痰、尿、口腔内擦過、甲状腺穿刺など様々な検体を取り扱っており、採取された検体を適切に処理することで標本化し、得られた細胞像で診断します。始めに細胞検査士がスクリーニングを行い、その後、病理医による最終診断を行っています。悪性が疑われる標本は他の細胞検査士や病理医と複数人でディスカッションし診断します。
お亡くなりになられた患者さんの死因究明や治療経過の確認などを目的として、ご遺族の承諾が得られた場合に病理解剖を行います。解剖の執刀医は病理医で、臨床検査技師はその介助を行います。その後、臨床病理合同カンファレンス(CPC)で、臨床側と病理側それぞれの視点から総合的に診療や治療効果についての評価を行い、今後の診療に役立てていきます。
提携している7カ所の離島診療所や県立宮古病院、県立八重山病院からの検体も受託しており、へき地診療に貢献しています。
午前8時から午後5時まで、成人外来患者の採血を行っています。採血台は3台あり、車椅子の患者にも対応できるようにしています。
患者取り違え防止の為、採血前に患者自身に氏名と生年月日を言っていただき、本人・受付票・採血管で相違がないこと確認後、採血を実施しています。
また、アルコール消毒薬でのかぶれたことある方や採血時に気分不良になりやすい方は、事前に申し出ていただくと、非アルコール消毒薬での対応や、ベッド上での採血の実施など対応いたしますのでご相談ください。