麻酔科

初期研修1年目及び2年目共通

1.目的

一見マイナーな科と思われる麻酔科が、なぜ貴重な初期研修期間に組み込まれているのかを今1度良く考えてみよう。麻酔管理の真髄は呼吸、循環、代謝を生命の恒常性の範囲に保つことである。換言すれば、どんな外傷や疾患でもこの3つを人工的であれ正常範囲内に保てば人は簡単には死なないのである。どんな救急の現場でもあわてずに対処できる。しかしこれらの知識は、知っているだけでは不十分であり、実際に施行できる技術を伴って初めて救命できる。1ヵ月の研修期間では全て習得するのは無理である。この1ヵ月間は、傍で見ていると簡単そうに見えるこれらの技術の難しさを自ら肌で感じる気付きの体験であり、医師であるからには生涯かけてこれらの知識と技術を身に着けていく努力を続ける門出の時にせねばならない。麻酔をかけるというきわめて具体的で特殊な事象の背景に隠れているものの大きさを感じ取ってほしい。

2.経験すべき目標

全身麻酔、脊椎麻酔・硬膜外麻酔の術前・術中・術後管理ができる。目標とする症例数は、全身麻酔30例、脊椎麻酔5例である

  1. 麻酔前評価(指導医とともに)
    1. 麻酔依頼書による術前評価を行う。術前検査値、既往歴、服用中の薬剤等の評価ができる
    2. カルテ診察、胸部X-P、心電図、心エコーなどの評価できる
    3. 患者の診察(聴診、触診、視診など)ができる
    4. 麻酔法の選択、患者への説明、インフォームド・コンセント、前投薬の必要性とその説明などが実施できる
    5. 麻酔合併症の予想とその対策(挿管困難、併発症への対応、ASAの理解)が立てられる
  2. 麻酔前準備
    1. 麻酔器、回路、ガスの供給の確認ができる
    2. モニターの設置、およびその理解・麻酔記録が十分に行える
    3. 輸液・輸血の実施、前投薬実施の確認ができる
    4. 使用する麻酔薬の理解とその実施が行える
  3. 麻酔手技の習熟
    1. 全身麻酔
    •   a. 輸液路、動脈ラインなどの確保、確認ができる
        b. 麻酔導入の手技が行える(気道確保、用手換気、気管挿管など)
        c. 麻酔維持が行える(吸入麻酔薬、静脈麻酔薬、筋弛緩薬、血管作動薬の理論と理解、人工呼吸器の理解と使用)
    1. 脊椎麻酔・硬膜外麻酔
    •   a. 麻酔法の理論と理解ができる
    1. 術後回復室
    •   a. 術後管理が行える(リカバリーでの患者の状態の理解と帰室判断など)
        b. 麻酔記録の登録ができる
    1. 術後回診(指導医と共に)
    •   a. 術後診察とその結果の記載ができる
        b. 周術期の合併症の有無と確認報告ができる(指導医ならびに主治医へ)
    1. 記録
      麻酔科研修期間中に研修した事項について記録ができ、それについて指導医と十分に相互判断をおこない充実した研修が習得できるようにする

3.その他

初期研修2年目で麻酔科をローテーションする際には、上記の経験に加えさらに進んだエコーガイド下中静脈穿刺、ファイーバー挿管やダブルルーメンチューブの挿管、また緊急手術の麻酔など1年目では経験できなかった症例の経験もできるように予定している

 

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