初期研修2年目
1.目標
1)【一般目標】
精神症状を有する患者、さらには医療機関を訪れるすべての患者に対して、心理社会的側面からも対応できるために、基本的な診断及び治療と必要な場合には精神科への診察依頼ができるような技術を習得する。 具体的には、主要な精神疾患・精神状態像、特に研修医が将来、各科の日常診療で遭遇する機会の多い疾患・病態の診療を、指導医とともに経験する。具体的には以下の目標がある。
- #1. プライマリ・ケアに求められる精神症状の診断と治療を実践する。
- 精神症状の評価と鑑別診断技術を習得する。
- 精神症状への診断と治療(薬物療法・心理的介入方法など)を実践する。
- #2. コンサルテーション・リエゾン精神医学に求められる精神症状の評価と治療を実践する。
- 身体疾患を有する患者の心理・行動理解のための知識と技術を習得する。
- 精神症状の評価と治療(薬物療法・心理的介入方法など)を実践する。
- 緩和ケアの基本を理解する。
- #3. 医療コミュニケーション技術を習得し、実践する。
- 初回面接のための技術を習得し、実践する。
- インフォームド・コンセントに必要なコミュニケーションの技術を習得し、実践する。
- 患者・家族の心理理解のための知識技術を習得し、面接を行なう。
- チーム医療モデルを理解する。
- 他職種との連携のための技術を習得する。
- 病診(病院と診療所)連携・病病(病院と病院)連携を理解する。
- #5.精神科リハビリテーションや地域支援体制を理解する。
- 社会復帰のための精神科デイケアや作業療法を見学する。(精和病院研修)
- 居宅生活支援事業を見学し,社会資源を活用する方法を理解する。(精和病院研修)
2)【行動目標】
- #1.精神および心理状態の把握の仕方および対人関係の持ち方について学ぶ
-
- 医療人として必要な態度・姿勢を身につける。
精神(こころ)と身体は一体であることを理解し、患者医師関係を良好に保つことに心を配ることを知識としてだけでなく、態度として身につける。
- 基本的な面接法を学ぶ。
- 患者に対する接し方、態度、質問の仕方を身につけ、患者の解釈モデル、受診動機、受診行動を理解する。
- 患者の病歴聴取を行い、記録することができる。
- 患者・家族への適切な指示・指導ができる。
- 心理的問題の処理の仕方を学ぶ。
- 精神症状の捉え方の基本を身につける。
- 陳述と表情・態度・行動から情報を得る。
- 患者の訴えを聞きながら、疾患・症状を想定してそれに関する質問を行い、症状の有無を確認する。患者の陳述を可能な限りそのまま記載すると同時に、専門用語での記載の仕方を学ぶ。
- 患者、家族に対し、適切なインフォームド・コンセントを得られるようにする。
診断、治療計画などについてわかりやすく説明し、了解を得て治療を行う。
- チーム医療について学ぶ
- 医療チームの一員としての役割を理解し、幅広い職種の医療従事者と協調・協力し、的確に情報を交換して問題に対処できる。
- 指導医に適切なタイミングでコンサルテーションできる。
- 上級および同僚医師、他の医療従事者と適切なコミュニケーションがとれる。
- 患者の転入、転出にあたり情報を交換できる。
- 関係機関や諸団体の担当者とコミュニケーションがとれる。
- 精神疾患に関する基本的知識を身につける。主な精神科疾患の診断と治療計画をたてることができる。
気分障害(うつ病、双極性障害)、認知症、統合失調症、器質性精神障害(せん妄)、身体表現性障害、ストレス関連障害などの診断、治療計画をたてることができる。
- 担当症例について、生物学的・心理学的・社会的側面を統合して診療できる。
脳の生理学的・薬理学的な側面すなわち生物学的側面、心理学的側面、家庭・職場などの社会学的側面から患者の状態を統合的に理解し、薬物療法、精神療法、心理・社会的働きかけなど状態や時期に応じて適切に治療することができる。
- 精神症状に対する初期対応と治療(プライマリ・ケア)の実際を学ぶ。
初診や緊急の場面において患者が示す精神症状に対して初期的な対応の仕方と治療の仕方を経験する。
- リエゾン精神医学および緩和ケアの基本を学ぶ。
一般科の外来、入院中の患者で精神症状が出現し、診療を依頼されたり、相談をされた場合、症例を通して実際の対応の仕方を経験する。また緩和ケアの精神的な側面について経験する。
- 向精神薬療法やその他の身体療法の適応を決定し、指示できる。
向精神薬を合理的に選択できるように、臨床精神薬理学的な基礎知識を学び、臨床場面で自ら実践する。また、電気けいれん療法などの身体療法の実際を学ぶ。
- 簡単な精神療法の技法を学ぶ。
支持的精神療法および認知療法、行動療法などの精神療法を実践し精神療法の基本を学ぶ。
- 精神科救急に関する基本的な評価と対応を理解する。
興奮、昏迷、意識障害、自殺企図などを評価し適切な対応ができる。
- 精神保健福祉法およびその他関連法規の知識を持ち、患者の人権に配慮した適切な行動制限の指示を理解できる。
任意入院、医療保護入院、措置入院と行動制限などについて理解する。自立支援医療、介護保険制度、成年後見制度について理解する。
- デイケアなどの社会復帰や地域支援体制を理解する。
外来デイケアなどに参加し、社会参加のための生活支援体制を理解する。
2.経験すべき目標
- 経験すべき診察法・検査・手技
- 基本的な身体診察法
- 精神面の診察ができ、記載できる
- 基本的な臨床検査
- X線CT検査
- MRI検査
- 核医学検査(SPECT)
- 神経生理学的検査(脳波など)
- 臨床心理検査(知能検査、人格検査)
- 経験すべき症状・病態・疾患
- 頻度の高い症状
- 不眠
- 不安・抑うつ
- 緊急を要する症状・病態
- 意識障害
- 精神科領域の救急
- 経験が求められる疾患・病態
*必修項目
A.疾患については入院患者を受け持ち、診断、検査、治療方針について症例レポートを提出すること
B.疾患については、外来診療または受け持ち入院患者(合併症含む)で自ら経験すること
- 精神・神経系疾患
- 器質性精神障害(せん妄など)
- 認知症(血管性認知症を含む)⇒ A
- アルコール依存症
- 気分障害(うつ病、双極性障害)⇒ A
- 統合失調症 ⇒ A
- 不安障害(パニック障害など)
- 身体表現性障害、ストレス関連障害 ⇒ B
- 特定の医療現場の経験
- 精神保健・医療
( 精神保健・医療を必要とする患者とその家族に対して、全人的に対応するために )
- 精神症状の捉え方の基本を身につける
- 精神疾患に対する初期的対応と治療の実際を学ぶ
- デイケアなどの社会復帰や地域支援体制を理解する
- *必修項目 精神保健センター、精神病院等の精神保健・医療の現場を経験すること
- 緩和・終末期医療
( 緩和・終末期医療を必要とする患者とその家族に対して、全人的に対応するために )
- 心理社会的側面への配慮ができる
- 緩和ケア(WHO方式がん疼痛治療法を含む)に参加できる
- 告知をめぐる諸問題への配慮ができる
- 死生観・宗教観などへの配慮ができる
3.その他
- 研修方法
- 当院の初期臨床研修における精神科研修は、2年目に4週間以上の必修である
- 選択期間に精神科を研修する場合は、期間と希望に応じてさらに深く研修できるようなプログラムを個別に立案する
- 研修場所は当院および協力病院である沖縄県立精和病院である
( *具体的には下記の臨床場面で指導医から直接の指導をうけながら患者の診療を担当する)
- 当院精神病棟において、統合失調症、気分障害、認知症をはじめとする精神疾患の入院患者の診療に携わる
- 当院一般(身体科)病棟において、一般科から依頼された身体疾患を有する患者のリエゾン・コンサルテーション診療、緩和医療に携わる
- 指導医から精神疾患や精神保健医療制度についてレクチャーをうける
- 当院救急外来において精神科救急の初期対応を実践する
- 沖縄県立精和病院で社会復帰医療の実際を経験する
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