小児循環器内科

はじめに

 当院には沖縄県内で唯一の『小児循環器センター』があります。沖縄県民のニーズに応えて、県内のあらゆる小児循環器疾患に対応できように、2006年に一施設に集約された小児循環器センターとして発足しました。
 現在は、胎児から成人までその診療範囲は拡大され、胎児診断から、周術期管理、開心術を含めた心臓血管手術、様々なカテーテル治療、カテーテルアブレーション、集中治療管理、慢性心不全管理などを行い、状態が安定した患者様に対しては外来診療を行っています。また、離島など遠方から外来通院・入院されるお子さんとご家族の滞在用の施設『がじゅまるの家』が病院の近く(徒歩2分)に設立されています。
 

診療の基本方針

  1.  小児心臓血管外科をはじめ、小児集中治療科、新生児内科、産科、小児麻酔科、小児総合診療科、小児外科、放射線科などと協力し、チーム医療として小児循環器疾患の患者様のトータルケアを目指します。
  2.  グローバルスタンダードの医療を絶えず念頭におき、患者様のための医療を目指します。
  3.  24時間オープンの救命救急センターおよび新生児集中治療室(NICU)、小児集中治療室(PICU)があり、緊急を要する全ての小児循環器疾患の患者様を何時でも受け入れます。
  4.  小児循環器疾患に関して研修医や看護師への教育を積極的に行います。
 

特 色

1. 他科との連携

  1.  特に心臓血管外科との連携を大切にしています。毎週カンファレンスを開いて、全ての患者様の治療方針に関して討議しています。
  2.  小児科各専門部門との連携
     専門の医師が小児ICUに常駐する小児集中治療科をはじめ、新生児内科、小児麻酔科、小児外科、小児脳神経外科、小児感染症科、小児腎臓内科、小児血液・腫瘍内科、小児神経内科・こころ科、小児内分泌・代謝内科、小児整形外科、小児形成外科、歯科口腔外科、在宅部門など各専門科と連携しながら小児循環器疾患の患者様を包括的に診療しています。
  3.  成人部門との連携
     循環器内科とは定期的に合同カンファレンスを開催していて、2018年からは共同で成人先天性心疾患外来を開設しています。さらに、成人部門の心臓血管外科、集中治療科、呼吸器内科、腎臓内科、消化器内科、脳神経外科など各専門科との連携もあり、成人先天性心疾患の診療を総括的に行っています。
  4.  周産期センターの併設
     産科部門およびNICUを管理する新生児内科との強い協力関係のもと、胎児診断された患児とその妊婦様の管理をはじめ、新生児心疾患の周産期管理を行っています。さらに、成人先天性心疾患の女性の妊娠・出産に関しても産科と協力して取り組んでおり、全関係部門合同カンファレンスシステムを構築しています。

2. 一次救急から三次救急まで24時間オープンの救急室

 急性心不全、慢性心不全の増悪、不整脈発作、低酸素発作、感染性心内膜炎等の感染症などを発症した患者様を24時間受け付けています。

3. 離島を含めた地域医療

 沖縄は離島県であり、遠方の離島および鹿児島の南方離島までの小児循環器疾患の緊急受け入れ、定期心臓検診、胎児心疾患疑い児の母体搬送などを含めた地域医療も広く担っています。

4. 教育施設の役割

 当院は初期研修、小児科後期研修、および小児循環器専門医修練施設として、若いドクターが小児循環器疾患についての知識と技能を磨き、将来へのキャリアプランに向かって成育するように教育することを理念とします。研修医の先生は入院患者様の主治医を担当し、上級医の指導の下で、心エコー検査や心臓カテーテル検査を行い、診断・治療などの診療を実践してもらっています。
 2008年度から日本小児循環器学会、さらに2018年からは日本成人先天性心疾患学会による専門医制度が導入され、当院はそれらの修練施設に認定されています。小児および成人先天性心疾患に興味を持っている若い小児科医や小児循環器内科医にとって、胎児から新生児、小児、成人に至るまでの多種多様な症例を診療できる環境は、他の施設にはない研修の場になります。希望に満ちあふれた若い医師を募集しています。

 

診療実績

 専門外来を月曜日から金曜日まで週5日行い、年間約7000人の患者様を診察し、約400人の新規患者様を受け入れています。新規患者様のご紹介は地域連携室を通じて外来日程を調整しています。

小児循環器内科診療実績(年間の延べ人数)
                                                                                       
  2016年 2017年 2018年 2019年
入院患者数 492 553 513 501
心エコー(3Dエコー・経食道心エコーを含む) 4794 4621 5056 5301
トレッドミル検査 89 88 93 83
ホルター心電図 286 234 272 234
心臓カテーテル検査(治療を含む) 224 229 236 239
心臓カテーテル治療(アプレーションを含む) 59 62 79 104
 

診療体制

小児循環器内科医の6名が診療しています。
主な診療業務のスケジュール
                                           
 
小児循環器
外来
午前   佐藤 島袋   北野/島袋/西畑
午後   佐藤/北野/西畑 島袋/加藤 中矢代 佐藤/島袋
成人先天性
心疾患外来
午後     佐藤/北野/
當真/長田
   
入院業務 心臓カテーテル
検査/治療
胎児心エコー
検査
経食道心エコー
検査
心臓カテーテル
検査/治療
 
小児ICUカンファレンス(8:30)
  小児病棟回診 小児病棟回診   小児病棟回診
  小児循環器内科
カンファレンス
  小児科合同
カンファレンス
小児病棟
カンファレンス
  心臓カテーテル前
カンファレンス
  成人先天性心疾患
カンファレンス
小児心臓血管外科・
小児循環器内科
合同カンファレンス
  周産期
カンファレンス
     
  • 専門外来は予約制ですが、他科の外来受診時にも必要に応じて小児循環器内科の診察が可能です。
  • 緊急の場合は24時間体制で受け付けています。
  • 離島を含む県内外の医療機関、小児科医との連携により、何時でも対応しています。
  • 胎児心エコー検査と経食道心エコー検査は外来検査も行っています。
  • 入院業務の概説
心臓カテーテル検査・治療 多くは全身麻酔下に1日2〜3件施行
心臓カテーテル前カンファレンス 臨床工学技士、放射線技師も含めて、検査・治療手順の確認
小児循環器内科カンファレンス カテーテル検査・治療症例およびその他の症例の治療方針の検討
小児心臓血管外科・小児循環器内科
合同カンファレンス
心臓カテーテル検査・治療施行症例、
および他に手術を考慮すべき症例の治療方針の検討
周産期カンファレンス 産科、新生児科が主催、胎児診断症例の治療方針の確認
小児科合同カンファレンス 全科の小児科医が参加、希少症例や啓蒙的症例の治療方針・転帰の討論
小児科病棟カンファレンス 看護師を含めて、入院患者の在宅医療へ向けた診療方針などの検討・確認
成人先天性心疾患カンファレンス 月に1回、循環器内科と合同で、患者治療方針の検討
 

診療の実際

  •  心エコー(経胸壁)
     心臓・血管の構造・機能を、非侵襲的に評価します。診断の確定、治療法の選択には不可欠です。正確な診断のために、乳幼児の場合は薬で睡眠した状態で検査することがあります。

  •  経食道心エコー
     心房中隔欠損の欠損孔の位置や大きさ、弁疾患における狭窄、逆流、弁の形態などを詳細に観察することができ、治療法の選択に役立てます。

  •  胎児心エコー
     産科での胎児エコー検査で、心拡大、不整脈、胎児水腫、染色体異常などを指摘された胎児を対象に施行します。重症例を出生前に発見することで、出生後の治療・管理をより安全・迅速に行うことが可能になります。
  •  標準12誘導心電図
     両手足と前胸部6か所に電極をつけて、心筋細胞が興奮・収縮する際に発生する電流を心電計で記録します。不整脈や、心臓各部位の負荷(圧、容量)、心筋の異常、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)などの情報が得られます。

  •  ホルター心電図
     記録装置を24時間装着し、その間の心電図変化を調べる検査です。睡眠中の不整脈、昼夜の不整脈の出現頻度の差などをチェックします。運動を含めた普通生活中のどの時間帯に、何をきっかけに不整脈が発生しているかを観察します。頻発する不整脈では24時間のホルター心電図で診断が可能ですが、まれにしか発生しない重症不整脈には、植込み型心臓モニタを装着して診断することもあります。

  •  運動負荷心電図(トレッドミル)
     ベルトコンベアの上を歩き、2-3分毎に傾斜をきつくして、スピードも速くします。運動中の心電図変化(不整脈や心筋虚血の発生)を診断することで、重症度の判定や運動耐容能などを評価し、運動許容域を決定します。

  •  64列3D-CTアンジオ
     CT(Computed Tomography)装置はエックス線を発生するエックス線管球とエックス線の量を測定する検出器が向かい合うように設置されています。エックス線を人体に回転させながら照射し、透過してきたエックス線の強弱を検出器で収集します。この強弱の差をコンピューターで計算し、輪切りの画像を作り、身体の内部構造を観察します。さらに、この輪切りの画像をコンピューターで処理することで、3次元画像を得ることができ、様々な方向の断層画像が観察できます。現在は64列マルチスライスCTを用いて、複雑心奇形の構造や心臓冠動脈の診断はもちろん、気管(支)と血管の関係など、その他の臓器、血管系の病変の診断も行えます。
  •  MRI
     造影剤を使用せず、また放射線の被爆なしに、血管や心内構造の評価ができる検査です。ただし、検査中1時間前後動かずにいる必要があるため、乳幼児では鎮静剤を使用します。心室の容量や拍出量・逆流量を正確に知ることができます。ファロー四徴術後等で右心室が拡大した場合に、再手術の必要性を決定する際にも重要な検査です。ただし体内に金属が入っている場合には、検査ができない、もしくはきれいな画像が得られない場合があります。また、ペースメーカーが挿入されている患者様は設定が変更される危険があるため検査が受けられません。
  •  RI(ラジオアイソトープ)シンチグラフィー
     小児循環器領域では、肺血流シンチと心筋シンチを主に行っています。末梢点滴から放射性物質を注入して撮影します。肺血流シンチでは肺の血流分布状況を評価します。肺動脈狭窄や肺動脈性肺高血圧、肺動脈塞栓などが検査対象です。心筋シンチでは心筋の各部位への血流分布を検査でき、虚血の有無や心筋の繊維化などを診断します。川崎病やその他の虚血性心疾患、心筋症などが検査対象です。薬物負荷や運動負荷を合わせて施行することで、運動時の虚血状態を評価します。外来で施行可能ですが、乳幼児症例では薬で睡眠した状態で検査することもあります。
  •  心臓カテーテル検査・治療
     カテーテル検査と治療件数はここ数年で症例数が増加しています(診療実績参照)。カテーテル治療の内容は、肺動脈弁閉鎖・狭窄/大動脈弁狭窄に対するバルーン弁形成術、未治療病変または術後病変の大動脈縮窄、肺動脈狭窄、人工血管内狭窄などに対するバルーン形成術/ステント留置術、(緊急を要することが多い)心房中隔裂開術、体肺動脈側副血管/体肺静脈側副血管などに対するコイルや閉鎖栓を用いた塞栓術、左心低形成のなどの動脈管や総肺静脈還流異常の還流静脈に対するステント留置術、Amplatzer閉鎖栓・Occlutech Figulla Flex II閉鎖栓を用いた心房中隔欠損閉鎖術、Amplatzer閉鎖栓やコイル等を用いた動脈管閉鎖術、頻脈性不整脈に対するアブレーションなど多岐にわたっています。2020年からはAmplatzer Piccolo閉鎖栓を用いて2.5kg未満の新生児動脈管閉鎖術を開始しました。また、脳梗塞などを発症した卵円孔開存閉鎖術や皮下植え込み型除細動器の留置も開始しました。

他の医療機関への協力
・県立中部病院へ出張、心臓外来(毎月第2、第4水曜日)を開設して、中・北部地区の小児循環器診療も行っています。
・当院から宮古病院と八重山病院に出張して、心臓検診を毎年それぞれ二回行っています。離島の医師と連携して、治療計画やフォローアップを行っています。
・在沖縄米国海軍病院から小児循環器疾患の患者様の紹介に対応しています。

 

スタッフ紹介

佐藤 誠一(さとう せいいち)

       
職位 小児循環器内科部長
出身大学
(卒業年度)
富山医科薬科大学(1984年)
専門分野 小児循環器、カテーテル治療、心電図・不整脈
認定医・専門医など 医学博士(新潟大学)
小児科専門医、指導医(日本小児科学会認定)
小児循環器専門医(日本小児循環器学会認定)
循環器専門医(日本循環器学会認定)
不整脈専門医(日本不整脈心電学会認定)
成人先天性心疾患暫定専門医(日本成人先天性心疾患学会認定)
経皮的心房中隔欠損ASD閉鎖術実施医・教育担当医
経皮的動脈管開存PDA閉鎖術実施医・教育担当医
潜因性脳梗塞に対する経皮的卵円孔開存閉鎖術実施医
皮下植込み型除細動器S-ICD植込み実施医
未熟児PDAに対する経皮的PDA閉鎖術実施医
コメント 趣味は野球のプレーと観戦。まだ現役プレーヤーですが専門はヤジ。那覇ハーリーにも参加していますが鉦打ち専門です。さらに沖縄生活をエンジョイするために、船舶免許と自動二輪大型限定解除にチャレンジ。

北野 正尚(きたの まさたか)

       
職位 小児循環器内科医長
出身大学
(卒業年度)
山梨医科大学(1995年)
専門分野 小児循環器、カテーテル治療、経食道心エコー
認定医・専門医など 小児科専門医(日本小児科学会認定)
小児循環器専門医(日本小児循環器学会認定)
先天性心疾患インターベンション認定医
経皮的心房中隔欠損閉鎖術実施医・教育担当医
経皮的動脈管開存閉鎖術実施医・教育担当医
体重2.5kg未満の経皮的動脈管閉鎖術実施医
コメント 国立循環器病研究センター18年間のカテーテル治療の経験に基づき、心臓血管外科、循環期内科とも協力して、沖縄の低侵襲治療を発展させて、患者様の生活の質が良くなる様、最大限の努力を継続します。

島袋 篤哉(しまぶくろ あつや)

       
職位 小児循環器内科医長
出身大学
(卒業年度)
琉球大学(2005年)
専門分野 小児循環器、胎児心エコー
認定医・専門医など 小児科専門医(日本小児科学会認定)
胎児心エコー認証医
コメント 患者さん、ご家族に寄り添いながら、最適な治療とケアを提供できるように心がけております。胎児から成人まで、沖縄県民の笑顔と未来のために、今後も努力してまいります。

加藤 昭生(かとう あきお)

       
職位 小児循環器内科医師
出身大学
(卒業年度)
山梨大学(2010年)
専門分野 小児循環器全般
認定医・専門医など 小児科専門医(日本小児科学会認定)
小児循環器専門医(日本小児循環器学会認定)
コメント 患者さんと、そのご家族にとって最善の医療を目指します。                     

西畑 昌大(にしばた まさひろ)

       
職位 小児循環器内科医師
出身大学
(卒業年度)
広島大学(2011年)
専門分野 小児循環器全般
認定医・専門医など 小児科専門医(日本小児科学会認定
コメント 患者さんが安心して過ごせるように日々努力しています。                    

中矢代 真美(なかやしろ まみ)

       
職位 小児循環器内科・小児科副部長
出身大学
(卒業年度)
岡山大学(1993年)
専門分野 小児循環器、胎児心エコー、成人先天性心疾患
認定医・専門医など 小児科専門医(日本小児科学会認定)
コメント 県内心臓病の子供達とご家族を胎児から成人までサポートしていく体制を目指して全力を尽くします。
 


 

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